インプラント
インプラント治療について
失った歯を回復するために、従来からの入れ歯やブリッジに替わる方法として、現在最も注目されている治療法です。具体的には、あごの骨に埋め込んだチタン製の人工歯根に人工歯を装着する方法で、1965年から臨床応用がはじまり、現在、国際的に広く認められた治療法です。
他の治療法との比較
当院がインプラント治療をお勧めする最大の理由は、ご自分の歯と変わらない「自然な使用感」が得られることです。
「食べる・咬む」「笑う」「話す」といった、毎日の大切なシーンを快適に不安なくお過ごしいただけるための治療、 それがインプラントです。
もう、これまでのように「がまん」は必要ありません。
インプラント
- 歯の失い方
- 1本からすべての歯
- 治療法
- チタン製の人工歯根を歯の代わりに埋め込み、その上に歯をかぶせていく
- 審美性
- 周囲の歯や歯茎の色に合わせてテーラーメイドで作るため、自然で美しい見た目となる。
- デメリット
- 手術が必要となる。
- 治療時間が比較的長くなる。
ブリッジ
- 歯の失い方
- 数本
- 治療法
- 残っている両側の歯を削り、その上に橋を渡すように人工の歯をかぶせる
- 審美性
- 保険適用外の材料を選択すればご自身の歯に近い見た目が再現できる。
- デメリット
- 歯を失った部分の骨がやせてくる。
- 清掃性が悪くなり、支えている歯の健康を損なう可能性がある。
- 周囲の健康な歯を削る上、支えの歯に負担がかかり、将来的に折れてしまう場合もある。
入れ歯
- 歯の失い方
- 数本
- 治療法
- 周囲の歯に金属の留め金をつけて、取り外しの人工の歯を留める
- 審美性
- 留め金が見える部分もある。
- デメリット
- 周囲の歯に留め金をかけるため、健康な歯に大きな負担がかかる。
- 歯を失った部分の骨がやせる
- 掃性が悪くなり支えている歯の健康を損なう可能性がある。
- 異物感を感じやすい。
- 食事のたびに取り外して洗浄する必要がある。
インプラント治療のメリット
- 残っている歯の負担を軽くし寿命を長くできる
- インプラントは失ってしまった歯の部分に新たな歯を作る方法です。一本の歯を失ってしまうと、失った歯の噛み合わせの負担は残っている歯にかかります。残っている歯は負担が過重となり、また新たに歯を失ってしまいます。インプラントによって残っている歯の負担を軽くしてあげれば、残っている歯の寿命を長くすることができます。
- 残っている歯を削らなくていい
- インプラント治療ではなくブリッジ治療を行うと前後の歯を削る必要があります。歯には再生する力がありますが、一度削ってしまうと再生する力はなくなり、寿命が短くなってしまいます。また、ブリッジの一部が悪くなると全てを取り外し、やり直す必要があります。インプラントはシンプルにその歯だけをやり直せば済みます。
- 硬いものでも噛めるようになる
- 噛む力が残っている方で奥歯に入れ歯を入れてしまうと、ほとんど噛めなくなってしまいます。入れ歯は歯の20%から30%の力しかありません。インプラントは顎の骨に固定されているために、硬いものでも、くっつきやすいものでも噛むことができます。
- 顔の歪みや噛み合わせのバランスを整えることができる
- 奥歯の大臼歯を2本失ってしまうと噛み合わせのバランスが崩れてしまいます。奥歯の大臼歯は噛む力の70%を担っています。奥歯を失ってしまうと片側でしか噛むことができず、顔が歪んできたり、噛み合わせのバランスが崩れてしまいます。
- 顔の筋力を回復し若返ることができる
- 入れ歯になると噛む筋力が衰え、顔の張りがなくなってきます。口の周りには咬筋(こうきん)という噛む力を発揮する筋肉と、表情筋(ひょうじょうきん)という顔の動きを作る筋肉があります。噛む力が弱くなるとこれらの筋肉の張りがなくなり、シワが増えてきます。しかし、インプラントによって硬いものも噛めるようになると、筋肉が発達し、シワがとれ、張りが出てきます。
インプラントのデメリット
- 外科的な処置が必要なため骨の病気のある人はできない
- インプラントは顎の骨の中に人工歯根を入れて、顎の骨と人工歯根が付いた状態で機能させます。骨粗鬆症や重度の糖尿病などの方は骨がもろく、インプラントが骨に固定できないことがあるため、インプラント治療ができないことがあります。
- 3ヶ月以上の期間が必要
- インプラントは人工歯根を顎の骨に入れたあと、人工歯根と骨が着くまで3ヶ月程度待つ必要があります。完全に骨とインプラントが着いてから最終的な被せ物を行います。その間、必要があれば仮歯を入れて噛み合わせや審美性を回復しておきます。
- 100%インプラントが成功するわけではない
- インプラントを骨に入れたあと、全てのインプラントがくっつくわけではありません。何らかの原因で入れたインプラントが抜けてしまうことがあります。その場合は骨の回復を待ってから、再度入れ直す必要があります。
- 長持ちさせるにはメンテナンスが必要
- インプランドは歯と同じように歯周病になることがあります。定期的にクリーニングをしていかないとインプラントの周囲の骨が溶け、歯の歯周病と同じように揺れ始め抜けてしまいます。
インプラント治療の流れ
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精密検査で残っている歯の状態を確認する
口の中の精密検査を行います。残っている歯の歯周病の状態や、噛み合わせの状態などを確認するために歯周病精密検査、口腔内写真、噛み合わせの模型の検査を行います。
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CT撮影で骨の状態を確認する
インプラントを入れる部分の骨の厚みや幅、神経や血管の部分、鼻の空洞までの距離を確認するためにCTレントゲン撮影を行います。
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インプラントの位置や方向を診断する
今までの検査結果を元にインプラントの大きさ、長さ、骨を作る処置が必要かなどの診断をします。最終的な被せ物をどのように被せるかなどもこの時点で決定させて、インプラントの位置を決めます。
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インプラント手術で人工歯根を骨に埋める
インプラントの手術のほとんどは部分麻酔で行い、1本だけであれば1時間程度で終わります。シミュレーションをした理想的な位置にインプラントを埋入していきます。
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インプラントと骨が着くのを待ちます
挿入したインプラントと骨が結合するまで安静期間を置きます。
インプラントが骨と着くまで2か月~半年待ちます。今後何十年も使って頂くために必要な期間です。その間ブラシの当て方やお手入れの仕方を説明していきます。また、必要であれば仮の歯をいれて見た目にはわからないようにします。 -
インプラントの上に被せ物を作っていく
インプラントと骨が着いたのを確認すると土台や被せものの型を取ります。今まで噛んでいなかった部分は頬や舌、筋肉がゆがんでいます。噛むことによって周りの筋肉を機能させて元の状態に戻していきます。
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インプラントを長く使えるようにメンテナンスしていく
3か月から半年に一度、定期的にインプラントの周りの清掃やかみ合わせの確認をしていきます。
骨がない方のインプラント治療
- 骨がないところに骨を作る骨造成(こつぞうせい)
- インプラントは顎の骨に人工歯根であるインプラントを埋入する治療です。重度の歯周病で抜歯をした場合、骨が溶けてなくなっている場合が多いのです。そのままではインプラント治療ができないために、溶けてしまった骨を回復させる骨造成を行ってから、インプラントを埋入します。
- 上顎の副鼻腔が広い方にはソケットリフトやサイナスリフト
- 上顎の奥歯は鼻の空洞である副鼻腔の近くにあります。副鼻腔が広い方は上顎の奥歯の骨の厚みが薄いためにインプラントを埋入する高さが足りません。ソケットリフトはインプラントを埋入する際の入り口から、人工の骨を入れて骨の高さを増す方法です。また、サイナスリフトは副鼻腔の横から穴を開けて人工の骨を入れ、高さを増す方法です。
審美性の高いインプラントを行う方法
- インプラント治療後に歯茎の高さを維持する歯肉移植
- 特に前歯のインプラントを埋入した後、歯茎が痩せてインプラントの金属が見えてきてしまうことがあります。前歯の骨は奥歯より薄く、下がりやすいのです。そのため前歯にインプラントを行う場合は、インプラントを行うと同時に歯茎を厚くしておき、その下の骨が下がらないようにしておきます。
- 土台を白くしておくジルコニアアバットメント
- インプラントは人工歯根のインプラント、土台のアバットメント、被せ物のセラミックと分かれています。土台を白くしておくことによって、歯茎が下がっても白い部分が見えるだけなのであまり目立たなくできます。白い土台はジルコニアという硬い素材のセラミックを土台に使います。
インプラントを長持ちさせる方法
- 禁煙によって歯茎の抵抗力が回復する
- 喫煙はニコチンにより歯茎の毛細血管を収縮させて、インプラントの周りの抵抗力を低下させます。インプラント手術初期の感染や長期的な歯周病に対するリスクが高くなります。
- マウスピースで歯ぎしりの揺さぶりから守る
- メンテナンスによってインプラントの寿命を延ばす
- インプラントは他の歯より細菌に対する抵抗力が弱いです。歯周病もそうですが、定期的にプラークや歯石を取ってメンテナンスしないと悪化してしまいます。
- インプラントは動かないためかみ合わせの調整が必要
- インプラントは骨と直接固定されていますが、歯はすり減ったり、動いたりして少しづつ位置を変えています。そのため定期的に噛み合わせを調整していかないとインプラントだけが強く当たってしまい、抜けたり、揺れたりしてしまいます。
歯ぎしりはインプラントだけではなく、他の歯にとっても脅威です。歯ぎしりによる力は普段食事で噛む力の何十倍にもなります。歯ぎしりが強い方は必ずマウスピースで歯やインプラントを守りましょう。
インプラント治療を行わない方がいい方
- 骨粗しょう症の方はインプラントが骨に固定できない
- 骨粗しょう症の方は骨が弱く、骨折しやすい方です。インプラントは顎の骨に金属を固定するために、骨粗しょう症のような骨の弱い方に行うとインプラントが固定できずに抜けてしまいます。また、骨粗しょう症のお薬でビスフォスフォネート系のお薬を飲んでいる方はインプラントを行うと骨が壊死してしまう可能性があるので絶対行うことは出来ません。
- 糖尿病の方はインプラントが感染しやすい
- 糖尿病の方は細菌に弱く感染症にかかりやすいです。インプラントは外科処置のため糖尿病の方は処置後の回復が遅れインプラントと骨が着く前に感染して抜けてしまうことがあります。インプラントができる目安はHbAlc6.5以下にコントロールされ、最低でも6.9以下である必要があります。
- リウマチの方は主治医に相談してから
- 絶対出来ないわけではありませんが、CRP(C反応性蛋白)の数値や普段飲んでいるお薬の種類(骨粗しょう症の薬を飲んでいることもあります)によってかわります。必ず主治医に確認したうえで行うようにしてください。
- 抗血栓療法は血が止まりにくい
- 抗凝固剤をのまれている方は外科処置を行うと止血がしにくくなります。インプラント治療の場合は他の外科処置より出血は少なくて済みますが、主治医に確認してから行うことになります。
- 心臓疾患は感染対策が必要
- 心疾患が重篤な方は避けたほうがいいでしょう。軽度の方でも術前に抗生物質をのんで、心臓への感染対策を行ってからインプラント処置をします。
- 高血圧症の方は内科でコントロールしてから
- インプラント治療を行う際には必ず内科で血圧をコントロールされている必要があります。一般的に高血圧は最高血圧140mmHg以上・最低血圧90mmHg以上とされていますが痛みなどにより血圧は大きく変動します。血圧の薬を飲みながらインプラント処置を行います。
- 不安が多い神経疾患の方は避けたほうがいい
- インプラント処置は初めての方が多く、精神的に不安になり耐えられない方は無理に行わないほうがいいでしょう。
- 骨の成長が止まる20歳過ぎてから
- インプラントは骨とインプラント体を固定するものです。成長過程の方だと歯や顎の位置、かみ合わせなどが定まっていないのでインプラント治療後にかみ合わせが変わった場合、やり直さなくてはいけません。そのため成長が止まった20歳以降まで待ってから行ったほうがいいのです。
インプラントQ&A
患者の皆さんの治療に対するご質問を解決します。
- 治療の痛みは?
- インプラント治療は手術です。手術と聞くと恐ろしいですよね。
でも、インプラント治療の手術は、普通の外科手術と違い、危険も痛みもほとんどありません。
痛みについては、局所麻酔をしますので、一切の痛みを感じることはないでしょう。 - インプラントの寿命は?
- インプラント治療において、費用の心配とともに多いのが、この質問です。
イェデポリ大学(スウェーデン)のアデル先生が調べでは、インプラント治療をした人の約90%は、15年以上もつという報告をはじめ、数多くのデータがあります。
年をとるとともに合わなくなるものではありませんので、ほぼ一生使えるといっても過言ではないようです。 - 治療の時間は?
- 手術時間は、インプラントを埋め込む本数にもよります。
1本だけ埋め込む手術なら約30分、10本程度入れる場合では最長で3時間くらいかかります。
しかし、これは手術そのものの時間であって、術前の準備にかかる時間は含まれていませんので、すべての時間を合計すると、4~5時間ほどになると思われます。 - 治療の年齢制限は?
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インプラント治療の年齢制限はない、と一般的には言われていますが、これには条件があります。
顎を含めた骨というのは、だいたい18歳ぐらいまで成長し続けていますので、成長途上の骨には埋め込むことは出来ません。
また、あまり高齢になってからでは、機能の回復が遅くなるかもしれません。このあたりを考え合わせると、20歳~70歳くらいが、年齢制限になるでしょう。
もともとインプラントは、入れ歯の代わりに開発された治療法ですので、年齢の上限にはそれほどこだわらなくても良いかもしれません。しかし、どんな治療においても、年齢が若いほど回復は早いですから、インプラントを埋め込んだ後の歯ぐきの治りも、年齢が若いほど早いようです。
高齢になればなるほど、骨とインプラントの結合に時間がかかってしまいますので、インプラントを入れる!と決めたら早いにこしたことはないでしょう。 - 治療後のケアは?
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インプラントを埋め込んだ後のケアは、日々の正しいブラッシングと、定期健診が大切になります。
インプラントを埋め込んだ顎の骨も年齢と共に変化します。
定期的に歯科医院に通い、噛み合わせなどの調節をする必要があります。定期健診はインプラント治療終了後、まず1~2週間後に行い、ネジの締まり具合や歯ぐきの状態、噛み合わせなどを確認します。
その後は6週間後、6ヵ月後、12ヵ月後、24ヵ月後と経過を診ながら決めることになります。普段の手入れの方法は、基本的には自分の他の歯と同じです。
むしろ天然の歯に比べて複雑な形はしていないので、歯垢もつきにくく簡単です。
しかし、どんなに上手に歯ブラシを使える人でも、汚れ全体の70パーセントも落とせればよいほう、と言われていますので、それ以上のプラークコントロールが必要になってくるのです。